腹直筋離開(ふくちょくきんりかい)は、お腹の中央を縦に走る左右の腹直筋の間が広がり、お腹に力が入りにくくなったり、ぽっこりと出たお腹が元に戻りにくくなったりする状態を指します。妊娠・出産をきっかけに起こることが多く、産後しばらく経ってもお腹がへこまない、おへそが出てきたといった症状から、受診される方が増えています。
腹直筋離開そのものは、多くの場合、手術ではなく経過観察や運動療法の対象となります。一方で、腹直筋離開の方には、おへそのヘルニア(臍ヘルニア)を合併しているケースがあります。その場合は、保険診療による日帰り手術で治療できます。
このページでは、腹直筋離開の症状やセルフチェックの方法、臍ヘルニアとの関係、受診の目安について解説します。
腹直筋離開とは
腹直筋は、お腹の前面を縦に走る左右一対の筋肉で、いわゆる「腹筋」として知られています。左右の腹直筋の間は、「白線(はくせん)」と呼ばれる丈夫な線維の帯でつながっています。この白線は腹圧を支え、内臓を正しい位置に保つ役割を担っています。
腹直筋離開とは、白線が引き伸ばされて薄く広がり、左右の腹直筋の間隔が異常に開いた状態を指します。

腹直筋離開が起こる仕組み
妊娠中は、大きくなる子宮に合わせて、腹壁が前方へ押し広げられます。同時に、妊娠中に分泌されるホルモンの影響で靭帯や線維組織がやわらかくなるため、白線も伸びやすい状態になります。
出産後、多くの方は時間の経過とともに白線の幅が自然に狭まっていきます。しかし、伸びた白線が元の幅まで戻らず、離開した状態が続く場合もあります。
白線は筋肉ではなく線維組織であるため、一度大きく伸びると、自力で縮む力が弱くなります。腹筋を鍛えても白線そのものが短くなるわけではないことが、腹直筋離開の回復を難しくしている要因です。
腹直筋離開の定義
欧州ヘルニア学会(EHS)の診療ガイドラインでは、左右の腹直筋の間隔が2cmを超えて広がっている状態を、腹直筋離開と定義しています。2cm以下の間隔は、生理的な範囲とみなされます。1)
腹直筋離開になりやすい人
腹直筋離開は、妊娠・出産を経験した女性に最も多くみられますが、それ以外にも次のような要因が関係します。
- 複数回の妊娠・出産を経験している方
- 双子など多胎妊娠を経験した方
- 帝王切開を含め、腹壁に大きな負担がかかった方
- 内臓脂肪の蓄積により腹圧が高い状態が続いている方(男性にもみられます)
- 重い物を持ち上げる動作を日常的に繰り返している方
- 加齢により線維組織が弱くなっている方
腹直筋離開は、男性や出産経験のない女性にも起こる可能性があり、「産後の女性だけの悩み」ではありません。
腹直筋離開の症状
腹直筋離開は痛みを伴わないことが多く、お腹の見た目の変化や、お腹に力が入りにくいといった感覚をきっかけに気づく方がほとんどです。代表的な症状は次のとおりです。
- 産後しばらく経ってもお腹のふくらみが戻らない
- 仰向けから起き上がるときや、咳・いきみの際に、お腹の中央が縦に盛り上がる
- お腹に力が入りにくく、体幹が安定しない感覚がある
- おへそが以前より出てきた、おへその形が変わった
このうち、「起き上がる際にお腹の中央が縦に盛り上がる」という現象は、開いた左右の腹直筋の間から、腹圧によって内側の組織が押し出されることで起こります。これは、腹直筋離開に特徴的なサインです。
また、「おへそが出てきた」という症状は、腹直筋離開だけでなく、臍ヘルニアでもみられます。両者は見た目が似ているため、自己判断で区別することは難しく、鑑別には診察が必要です。詳しくは「腹直筋離開の方はなぜ臍ヘルニアを合併しやすいのか」で解説します。
セルフチェックの方法
腹直筋離開は、ご自身でも簡単に確認できます。以下は、腹直筋離開の研究で標準的に用いられている触診法をもとにした手順です。2)3)
チェックの手順
- 仰向けに寝て、両膝を立てます
- 片手をおへその真上に置き、指先をおへそに向けて縦にそろえます
- 頭と肩を軽く持ち上げ、腹筋に力が入った状態にします
- 指を軽く沈めるようにして、左右の腹直筋の間にどれだけ指が入るかを確認します
- おへその上下数cmの位置でも、同様に確認します
このとき、指が沈み込む幅と深さを覚えておいてください。診察の際にお伝えいただくと、参考になります。
チェック結果の見方
| 指の本数 | 判断 |
|---|---|
| 1本まで(約2cm以下) | 正常の範囲です |
| 2本以上(約2cm超) | 腹直筋離開の可能性があります。気になる症状があれば受診をご検討ください |
左右の腹直筋の間に指が2本以上入る場合は、欧州ヘルニア学会の定義である「2cm超」に相当し、腹直筋離開の可能性があります。1) 指の幅には個人差があるため、あくまで目安としてください。離開の程度(軽度・中等度・重度)は、診察時に超音波検査で正確に計測して判断します。
「指が2本以上入る」「おへそが出ている」「起き上がるときにお腹の中央が縦に盛り上がる」のいずれかに当てはまる場合は、一度、医療機関で診察を受けることをおすすめします。
自然に治る?放置するとどうなる?
産後の自然経過
産後の腹直筋離開は、時間の経過とともに自然に改善する方が多くいます。初産婦300名を妊娠中から産後12か月まで追跡したノルウェーの研究では、産後6週の時点で60.0%に腹直筋離開がみられました。その割合は、産後6か月で45.4%、産後12か月で32.6%まで減少しています。2)
つまり、産後半年から1年の間に、およそ半数の方は自然に離開が狭まっていきます。産後数か月の時点でお腹の開きが気になっても、すぐに治療を考える必要はなく、まずは経過をみることが一般的です。
一方、この研究からは、産後1年を過ぎても約3人に1人に離開が残っていることも分かります。2) 産後1年以上経過してもお腹の開きや症状が続いている場合は、その後の自然な改善が期待しにくくなるため、一度診察を受けることをおすすめします。
放置した場合に考えられること
腹直筋離開は、白線が薄く広がっているものの、腹壁に穴(ヘルニア門)が開いているわけではありません。そのため、腹直筋離開そのものが原因となり、腸が飛び出して戻らなくなる「嵌頓」といった緊急性の高い事態が起こることはありません。この点で、腹直筋離開はヘルニアとは異なる状態です。
ただし、離開が残ったまま経過すると、次のような影響が続く可能性があります。
- お腹のふくらみが戻らず、見た目の悩みが続く
- 体幹が安定しない感覚が続く
- お腹に力が入りにくく、日常動作や運動で不便を感じる
腹直筋離開の主な問題として、「見た目に対する悩み」と「体幹の不安定さ」が挙げられています。これらが生活の質に影響する場合は、治療を検討する必要があります。
なお、腹直筋離開が腰痛の原因になるという説がありますが、産後12か月まで追跡した研究では、離開のある方とない方で腰痛の訴えに差はみられませんでした。2) 腰痛がある場合は、腹直筋離開とは別の原因も含めて評価する必要があります。
臍ヘルニアを合併している場合は別
注意が必要なのは、腹直筋離開に臍ヘルニアを合併している場合です。臍ヘルニアには、腹壁に実際の隙間(ヘルニア門)があります。そのため、腹直筋離開とは異なり、自然に治ることはありません。
また、まれに腸が隙間にはまり込み、戻らなくなる嵌頓を起こすことがあります。その場合は、緊急手術が必要になります。
「おへそが出てきた」という症状がある方は、腹直筋離開だけなのか、臍ヘルニアを合併しているのかを、診察で確認しておくことが大切です。
腹直筋離開の方はなぜ臍ヘルニアを合併しやすいのか
白線の中で最も弱い場所がおへそ
おへそは、胎児期にへその緒が通っていた跡です。白線の途中に空いた輪(臍輪)が、生後に閉じてできた部分にあたります。そのため、おへその周囲は白線の中でも生まれつき最も薄く、腹圧に対して弱い構造になっています。
腹直筋離開では、白線全体が引き伸ばされて薄くなります。このとき、もともと弱いおへその部分にも同じ力がかかるため、臍輪の隙間が広がることがあります。そこから腹膜や脂肪、腸の一部が押し出されることで、臍ヘルニアが生じます。
腹直筋離開と臍ヘルニアは、どちらも「白線が伸びて薄くなる」という共通の背景をもち、いわば同じ根から生じる状態です。
欧州ヘルニア学会のガイドラインでは、腹直筋離開を「ヘルニア合併の有無」によって分類しています。このことからも、両者はしばしば同時にみられ、治療方針を左右する組み合わせであることが分かります。1)
腹直筋離開と臍ヘルニアの違い
見た目が似ていても、両者は医学的にはまったく異なる状態です。
| 腹直筋離開 | 臍ヘルニア | |
|---|---|---|
| 状態 | 白線が薄く広がっている(穴はない) | 白線に隙間(ヘルニア門)が開いている |
| ふくらみの形 | 起き上がる際に、お腹の中央が縦長に盛り上がる | おへその部分だけが丸くふくらむ |
| 触った感じ | やわらかく、境目がはっきりしない | ふくらみの縁に隙間を触れることがある |
| 押したとき | 力を抜くと平らになる | 押すと中に戻る(戻らない場合は要注意) |
| 自然に治るか | 産後は一定期間で狭まることが多い | 自然には閉じない |
| 手術の対象 | 単独では保険適用の手術なし | 保険適用の手術あり |
ただし、実際には両者が重なっている方も多く、「縦長の盛り上がりの中央から、おへそだけがさらに出ている」といった見え方をすることもあります。ご自身で判断することは難しいため、おへその変化が気になる方は診察を受けてください。
診察で合併の有無を確認します
当院では、まず触診によって離開の幅と位置を確認します。そのうえで、超音波検査でおへその周囲を観察し、臍ヘルニアの有無と大きさを確認します。
超音波検査は、腹直筋離開の正確な計測と、合併するヘルニアの発見の両方に有用な検査です。検査は数分で終わり、痛みや放射線被ばくはありません。
必要に応じてCT検査を行うこともありますが、多くの場合は、触診と超音波検査で診断が可能です。
何科を受診すればよいか、診察で分かること
腹直筋離開は何科に相談すればよいか
腹直筋離開の相談先は、ご自身の状態や受診の目的によって異なります。
- 外科・消化器外科:臍ヘルニアの合併が疑われる場合や、おへそが出ている場合。ヘルニアの診断と手術を専門とする診療科です
- 整形外科・リハビリテーション科:体幹の不安定さが主な悩みで、運動療法による改善を希望する場合
- 産婦人科:産後の健診や体調全般に関する相談の一環として、確認したい場合
「おへそが出てきた」「お腹の中央に縦長のふくらみがある」といった症状がある方は、臍ヘルニアの合併を確認するため、まずは外科を受診することをおすすめします。
受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、診察をご検討ください。
- セルフチェックで指が2本以上入る
- おへそが出てきた、おへその形が変わった
- 起き上がるときに、お腹の中央が縦に盛り上がる
- 産後1年以上経過しても、お腹の開きや症状が続いている
- おへそのふくらみを押しても戻らない、痛みがある(この場合は早めの受診をおすすめします)
診察の流れ
- 問診:出産歴、症状の経過、気になっている点をお伺いします
- 触診:離開の幅と位置、おへその状態を確認します
- 超音波検査:離開幅を計測し、臍ヘルニアの有無と大きさを確認します
- 結果の説明:腹直筋離開のみか、臍ヘルニアを合併しているかをお伝えし、それぞれの状態に応じた対応をご説明します
診察は保険診療で受けられます。初診当日に超音波検査まで行い、結果をお伝えします。
今後の妊娠予定がある方へ
臍ヘルニアの手術を検討する場合は、今後の妊娠予定を考慮する必要があります。欧州・米州ヘルニア学会の合同ガイドラインでは、手術後の妊娠は再発の危険因子であり、修復手術は最後の妊娠が終わってから行うことが推奨されています。4)
そのため、妊娠を予定されている方は、診察時にその旨をお伝えください。手術の時期については、症状の程度とご家族の計画を踏まえ、一緒に検討します。臍ヘルニアが小さく、症状も軽い場合は、出産を終えてから手術を行う選択肢もあります。
腹直筋離開の治療法
腹直筋離開の治療方針は、臍ヘルニアを合併しているかどうかによって大きく異なります。合併がない場合は保存療法が中心となり、合併がある場合は、保険診療の手術によって両方をまとめて治療できる可能性があります。
保存療法(臍ヘルニアの合併がない場合)
産後の一定期間は自然に離開が狭まる方も多いため、まずは経過観察と運動療法で様子をみることが一般的です。
運動療法では、腹横筋や骨盤底筋など、お腹を内側から支える筋肉を働かせるトレーニングが中心となります。一方で、離開部分に強い腹圧がかかる動作は、避けたほうがよいとされています。
ただし、運動療法によって離開幅そのものが縮まるかどうかについては、質の高い研究が少なく、現時点では確立した結論が出ていません。1) 運動療法は「離開を閉じる治療」というよりも、「体幹を安定させ、症状を和らげる取り組み」と考えていただくのが正確です。
具体的なメニューについては、理学療法士や産後ケアの専門家による指導を受けることをおすすめします。
手術療法(腹直筋離開単独の場合)
腹直筋離開だけで臍ヘルニアを合併していない場合、日本では保険診療として認められている手術はありません。腹直筋離開は、腹壁に穴が開いているわけではありません。そのため、医学的にはヘルニアと区別され、手術の保険適用の対象外となっています。
海外では、白線を縫い縮める手術(白線縫縮術)が行われています。欧州ヘルニア学会のガイドラインでも、ヘルニアを合併していない腹直筋離開に手術を行う場合は、白線縫縮術が提案されています。1)
ただし、同ガイドラインでは、「手術を行うかどうかは、患者と外科医が選択肢と結果を十分に共有したうえで決めるべき」とされており、まずは保存療法を優先する立場です。1)
当院では、腹直筋離開のみの方に対しては、診察で状態をご説明したうえで、保存療法の考え方をお伝えしています。
臍ヘルニアを合併している場合:eTEP法による日帰り手術(保険適用)
腹直筋離開に臍ヘルニアを合併している場合は、臍ヘルニアに対する手術を保険診療で行うことができます。
ヘルニアを合併した腹直筋離開に対しては、メッシュを用いた修復が推奨されます。当院では、臍ヘルニアに対して、eTEP法による内視鏡手術を行っています。腹直筋の後ろ側にスペースを作り、ヘルニア門を閉じたうえで、大きなメッシュを置いて腹壁を広く補強する方法です。
皮膚の切開は小さく、メッシュが腹腔内に触れないため、臓器との癒着のリスクを抑えられます。eTEP法は、複数の研究をまとめた系統的レビューにおいて、腹壁ヘルニアの修復法として安全に実施でき、短期成績も良好であることが報告されています。5)
腹直筋離開を合併した臍ヘルニアにこの手術を行う場合、メッシュで離開部分を含む広い範囲を補強します。そのため、ヘルニアの修復と同時に、伸びて薄くなった白線の部分も裏側から支えることができます。
手術は日帰りで行い、当日にご帰宅いただけます。手術の詳しい内容は、臍ヘルニアの日帰り手術についてのページをご覧ください。
腹直筋離開が気になる方は当院までご相談ください
当院は、そけいヘルニア・臍ヘルニアの日帰り手術を専門とするクリニックです。腹直筋離開が気になる方に対して、次のような対応を行っています。
診察で行うこと
- 触診と超音波検査による腹直筋離開の評価(離開幅の計測)
- 臍ヘルニアを合併しているかどうかと、その大きさの確認
- 腹直筋離開のみの場合:状態のご説明と、保存療法の考え方のご案内
- 臍ヘルニアを合併している場合:eTEP法による日帰り手術(保険適用)のご提案
「手術が必要かどうか分からない」「臍ヘルニアかどうかだけ確認したい」という段階でも、診察をお受けいただけます。診察の結果、手術が不要と判断される場合も多くあります。
気になる症状がある方は、まずはご相談ください。
こんな方はご相談ください
- 産後1年以上経っても、お腹の開きが戻らない
- おへそが出てきた、おへその形が変わった
- 起き上がるときに、お腹の中央が縦に盛り上がる
- 他院で腹直筋離開と言われたものの、臍ヘルニアの有無を確認していない
- 臍ヘルニアと言われたが、腹直筋離開も気になっている
ご予約について
診察のご予約は、Webまたはお電話で承っています。また、LINEによる無料相談にも対応しております。お気軽にご相談ください。
費用について
診察・検査の費用
お腹の開きやおへその変化などの症状があり、医師が診療上必要と判断した場合、診察と超音波検査は保険診療で受けられます。また、腹直筋離開のみで臍ヘルニアの合併がない場合でも、診察と検査は保険診療で受けられます。
手術の費用
臍ヘルニアを合併している場合、eTEP法による日帰り手術には健康保険が適用されます。当院で手術を受けられた場合の、高額療養費制度適用後の自己負担額の目安は次のとおりです。
70歳未満
- 住民税非課税世帯:36,900円
- 目安年収 370万円未満:61,500円
- 目安年収 370万〜770万円:約87,000円
- 目安年収 770万円以上:約110,000円〜約120,000円
70歳以上
- 住民税非課税世帯のうち年金収入80万円以下等:8,000円
- 住民税非課税世帯:11,000円
- 一般対象者(目安年収 156万〜370万円):22,000円
- 現役並み所得(目安年収 370万〜770万円):約87,000円
- 現役並み所得(目安年収 770万円以上):約110,000円〜約120,000円
腹直筋離開単独の場合
腹直筋離開のみで臍ヘルニアを合併していない場合、保険適用となる手術はありません。診察と検査は保険診療で受けていただけますが、その後の運動療法などは、当院での治療の対象外となります。
腹直筋離開に関するよくあるご質問
Q.腹直筋離開は自然に治りますか?
産後の腹直筋離開は、時間の経過とともに狭まる方が多くいます。産後6週で60%にみられた離開が、産後12か月には32.6%まで減少したという研究があります。2) 一方で、産後1年を過ぎても約3人に1人には離開が残っており、その後の自然な改善は期待しにくくなります。
Q.いつまで様子をみてよいですか?
産後1年程度は、自然な回復が見込める期間です。産後1年以上経過してもお腹の開きや症状が続いている場合は、診察をおすすめします。また、期間にかかわらず、「おへそが出てきた」「ふくらみを押しても戻らない」といった症状がある場合も、臍ヘルニアの合併を確認するために診察をご検討ください。
Q.帝王切開だと腹直筋離開になりやすいですか?
出産方法によって、腹直筋離開のなりやすさが変わるという明確な根拠はありません。腹直筋離開は、出産方法にかかわらず、妊娠中に大きくなる子宮によって白線が引き伸ばされることで生じるためです。
帝王切開で出産された方も、そうでない方も、産後にお腹の開きやおへその変化が気になる場合は、同じように診察をご検討ください。
Q.男性でも腹直筋離開になりますか?
男性にも起こります。男性では、内臓脂肪の蓄積によって腹圧が高い状態が続くことが主な原因です。中年以降の男性で、お腹の中央が縦に盛り上がる場合は、腹直筋離開の可能性があります。男性も臍ヘルニアを合併することがあるため、おへその変化があれば診察をご検討ください。
Q.コルセットや骨盤ベルトは効果がありますか?
コルセットや腹帯によって腹直筋離開が治るという根拠はありません。欧州ヘルニア学会のガイドラインでは、手術後の痛みの軽減や動きやすさの補助として、腹帯の使用が提案されています。しかし、手術をしない場合に離開を改善する効果は示されていません。1)
日常生活で体幹を支える補助として使用することには問題ありませんが、着用するだけで離開が閉じることは期待できません。
Q.腹筋運動をしてもよいですか?
上体起こし(シットアップ・クランチ)のように、お腹の中央が縦に盛り上がる動作は、離開部分に強い腹圧をかけるため、避けたほうがよいとされています。腹横筋や骨盤底筋を働かせる呼吸法や体幹トレーニングが推奨されますが、運動によって離開幅そのものが縮まるかどうかについては、現時点で確立した結論が出ていません。
Q.腹直筋離開の手術は保険適用ですか?
腹直筋離開だけの場合、日本では保険適用となる手術はありません。臍ヘルニアを合併している場合は、臍ヘルニアに対する保険診療の手術(eTEP法)として治療できます。この手術では、ヘルニアの修復とともに、離開部分を含む腹壁の補強を行います。
Q.放置するとどうなりますか?
腹直筋離開そのものは、腹壁に穴が開いているわけではありません。そのため、腸が飛び出して戻らなくなるような緊急事態は起こりません。ただし、お腹のふくらみや体幹の不安定さが続くことがあります。
臍ヘルニアを合併している場合は、自然に治ることはありません。まれに嵌頓を起こすこともあるため、合併の有無を診察で確認しておくことが大切です。
参考文献
1) Hernández-Granados P, Henriksen NA, Berrevoet F, et al. European Hernia Society guidelines on management of rectus diastasis. Br J Surg. 2021;108(10):1189-1191.
2) Sperstad JB, Tennfjord MK, Hilde G, Ellström-Engh M, Bø K. Diastasis recti abdominis during pregnancy and 12 months after childbirth: prevalence, risk factors and report of lumbopelvic pain. Br J Sports Med. 2016;50(17):1092-1096.
3) Bursch SG. Interrater reliability of diastasis recti abdominis measurement. Phys Ther. 1987;67(7):1077-1079.
4) Henriksen NA, Kaufmann R, Simons MP, et al. EHS and AHS guidelines for treatment of primary ventral hernias in rare locations or special circumstances. BJS Open. 2020;4(2):342-353.
5) Aliseda D, Sanchez-Justicia C, Zozaya G, et al. Short-term outcomes of minimally invasive retromuscular ventral hernia repair using an enhanced view totally extraperitoneal (eTEP) approach: systematic review and meta-analysis. Hernia. 2022;26(6):1511-1520.


