嵌頓とは|鼠径ヘルニアの危険な合併症をわかりやすく解説!
鼠径ヘルニアは放置すると、重大な合併症である嵌頓(かんとん)を引き起こす可能性があります。
本記事では、鼠径ヘルニアの危険な合併症である「嵌頓」について解説し、早期受診の重要性をお伝えします。
鼠径ヘルニアとは
まず、嵌頓を理解するために、鼠径ヘルニアの病態を知っておくことが重要です。
鼠径ヘルニアは、太ももの付け根(鼠径部)の筋肉に穴が開いて、お腹の中の臓器(腸や卵巣など)が膨らんで外に出る病態を指します。俗に脱腸とも言われます。
小児によく見られます病気ですが、成人、特に40代以上の男性にもよく発症します。
典型的な症状は、鼠径部にピンポン球のような膨らみが現れることです。
この膨らみは、立っているときや力を入れるときに大きくなり、横になるか力を抜くと消えて凹みます。自然に治ることはありませんし、放置すると徐々に膨らみが大きくなります。
他にも、鼠径部の違和感や痛みを感じることがあります。また、症状が進行すると、便秘や排尿障害の原因になることもあります。
嵌頓とは
鼠径ヘルニアの症状を放置すると、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすだけでなく、時に危険な状態になることがあります。その危険な状態を「嵌頓(かんとん)」と呼びます。
嵌頓とは、「嵌まり込む」ことを意味します。鼠径ヘルニアの場合、鼠径部に出来た筋肉の穴に腸が嵌まり込んでしまい、抜けなくなることをさします。
この嵌頓は、鼠径ヘルニアの合併症として最も危険で突然現れます。鼠径ヘルニアでは、この合併症である嵌頓を防ぐために治療を推奨していると言っても過言ではありません。
では、なぜ嵌頓は危険なのでしょうか?以下に理由を解説していきます。
嵌頓のリスク:腸閉塞
嵌頓を起こし、筋肉の穴に腸が嵌まり込んでしまうと腸がその部分で狭くなってしまい、食事や消化液が通過出来なくなってしまいます。医学的には、「腸閉塞」の状態になります。
この腸閉塞を起こすと、食欲低下やお腹の張り、ひいては吐き気、嘔吐などをきたします。
嵌頓のリスク:腸壊死(腸が腐る)
壊死(えし)とは、体の一部の細胞や組織が死に陥ることを意味します。
嵌頓を起こした腸には、十分な血流が供給出来なくなり(虚血)、逆に血流が外に出て行きにくくなることで(うっ血)、組織が壊死してしまいます。
一度壊死した組織は、元の健康な状態に戻すことが出来ないどころか放置しておくと、人体に極めて有害な状態を引き起こします。つまり、壊死組織は手術で取り除く必要があります。
腸壊死を起こした場合、細菌や有害物質が全身に回って敗血症を引き起こす可能性があります。また腸に穴が開き、腸液がお腹の中に漏れ出て腹膜炎を来たします。これらは一度発症すると、命の危険性があります。
嵌頓のリスク:腹膜炎
腹膜炎とは、腹膜に炎症が起こる疾患です。嵌頓をきっかけに起こる急性腹膜炎は、急激な腹痛に襲われ、24時間以上放置してしまった場合、命にかかわることもあります。
嵌頓を発症した際に、患者さん自身で膨らんだ部分を押し、嵌頓を直そうとする方がおられます。これは非常に危険な行為で、嵌頓した時点で腸が壊死していた場合、それをお腹の中に戻すことで、お腹の中で腸が破れてしまい腹膜炎を起こすことがあります。
鼠径ヘルニアは早期受診が重要
鼠径ヘルニアを放置して症状が進行すると、患部の痛みや腫れがひどくなり、さらに腸が詰まる「嵌頓」を起こす可能性があります。嵌頓を起こすと、腸閉塞、腸壊死、腹膜炎といった危険な状態を発症する可能性があります。
危険な合併症である嵌頓を防ぐために、鼠径ヘルニアが疑われる場合は、まず医師に相談し、診察や検査を受けて正確な診断を受けることが重要です。
鼠径ヘルニアの症状がある方は、専門クリニックなどを早期に受診することをおすすめします。
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