鼠径部の痛みは注意!鼠径ヘルニアと危険な嵌頓状態

大阪・梅田にある鼠径ヘルニア専門クリニック「大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック」です。当院では、成人の鼠径ヘルニアに対し、内視鏡(腹腔鏡)を用いた日帰り手術を行っています。
この記事では、「鼠径部の痛みで疑われる鼠径ヘルニアと危険な状態“嵌頓”」について解説します。なお、記事の内容は、ページ最下部に掲載しているYouTube動画でも紹介しています。あわせてご参考ください。
鼠径部とは

鼠径部とは、足の付け根にあたる溝の内側に位置する、三角形状の下腹部の部分を指します(上図イラスト参照)。解剖学的には、恥骨の左右外側から股関節の前方にかけて広がる領域であり、股間を構成する重要な部位でもあります。
この部分には、鼠径靭帯をはじめ、動脈・静脈・リンパ管・神経などの組織が集まっており、身体の機能を支えるうえで重要な役割を果たしています。そのため、鼠径部に「痛み」や「しこり」などの症状が見られる場合は、鼠径部に関連する病気の可能性があり、注意が必要です。
鼠径部で起こる病気

鼠径部では、さまざまな病気が発生する可能性があります。特に、「痛み」や「しこり」といった症状がある場合には、以下のような疾患が疑われます。
鼠径ヘルニア(脱腸)
鼠径部の筋肉に隙間(ヘルニア門)ができ、腸などの腹部の臓器がその隙間から皮膚の下に飛び出す病気です。一般的には「脱腸」とも呼ばれます。
膨らみは、立ったときやお腹に力を入れたときに目立ちやすく、横になると自然に引っ込むのが特徴です。放置すると腸がはまり込んで戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という危険な状態に進行することもあり、注意が必要です。
鼠径部リンパ節腫脹
鼠径部のリンパ節が腫れた状態を指します。
リンパ節は、体内を流れるリンパ液の中に入り込んだ細菌やウイルス、がん細胞などを捕らえて処理する働きをしています。感染症や炎症、悪性リンパ腫などの血液の病気によって腫れることがあり、皮膚の下にしこりのように触れたり、押すと痛みを伴ったりすることがあります。
動脈瘤、静脈瘤
鼠径部を走る動脈や静脈がふくらんでこぶ状になる状態を指します。
動脈瘤の場合は、拍動を感じるふくらみとして現れることがあります。静脈瘤は血液のうっ滞によってふくらみ、姿勢や日中の活動により大きさが変化することがあります。
加齢、動脈硬化、血管壁の脆弱化などが原因とされています。
軟部腫瘍、膿瘍
皮膚の下にできるしこりや膿のたまり(膿瘍)を指します。
軟部腫瘍には、脂肪腫や粉瘤などの良性腫瘍があり、やわらかく可動性があるしこりとして感じられます。膿瘍は感染が原因で膿がたまった状態であり、赤く腫れて痛みや熱感を伴い、ブヨブヨとした触感が特徴です。
Nuck(ヌック)管水腫
ヌック管水腫は、20〜40代の女性に見られる比較的まれな病気で、鼠径部に水がたまった袋(嚢腫)ができ、ふくらみとして現れます。
男性では、これと似た状態として、精索水腫や陰嚢水腫があります。こちらは主に1歳未満の乳児に多く、自然に治ることが多いですが、女性の場合は成人になってから気付くことが多い傾向があります。
鼠径ヘルニアとは

鼠径部ではさまざまな病気が発生しますが、その中でも代表的な病気として挙げられるのが「鼠径ヘルニア」です。
鼠径ヘルニアは、太ももの付け根(鼠径部)の筋肉に穴が開き、鼠径部の膨らみを認めるとともに、腸をはじめとした臓器が外に飛び出す病態を指します。一般的に、脱腸とも呼ばれる病気です。鼠径ヘルニアは小児によく見られる病気ですが、成人、特に40代以上の男性にも頻繁に発症します。
鼠径ヘルニアは自然治癒することはなく、治療には手術が必要です。ヘルニアバンドで穴を防ぐなどの対策がありますが、日常生活を送る中で適切に穴を防ぎ続けることは実質的に困難です。
治療は、主に「内視鏡(腹腔鏡)手術」と「鼠径部切開法」の2種類があります。
鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアの典型的な症状は、鼠径部にピンポン球のような膨らみが現れることです。この膨らみは、立っている時や力を入れるときに大きくなり、横になるか力を抜くと膨らみが凹んだり消えたりします。
鼠径ヘルニアの症状が軽い場合、鼠径部の膨らみに伴って違和感を感じるものの、痛みはないことがしばしばあります。しかし、病状の進行とともに徐々に鼠径部に痛みを感じるようになります。
この痛みは、鼠径ヘルニアの膨らんだ部分を脱出した臓器が圧迫することで生じます。病状が進行して膨らみが大きくなる過程で、歩くことができないほどの激しい痛みとともに鼠径部の膨らみが硬く大きく腫れ上がり、元に戻らなくなった場合は注意が必要です。
この状態では、嵌頓(かんとん)と呼ばれる危険な状態を引き起こしている可能性があります。
嵌頓とは

「嵌頓」とは、「嵌まり込む」ことを意味します。鼠径ヘルニアの場合、鼠径部に生じた筋肉の穴に腸をはじめとした臓器が嵌まり込み、抜け出せなくなることを指します。
嵌頓を起こすと、腸閉塞や腸壊死、腹膜炎といった危険な状態を発症する可能性があります。腸閉塞に伴う嘔吐と誤嚥性肺炎、腸壊死に伴う腹膜炎といった病態は、命に危険を及ぼす可能性があります。
この嵌頓は、鼠径ヘルニアの合併症として最も危険で、突如として現れます。鼠径ヘルニアの治療が推奨される最も大きな理由は、この嵌頓を未然に防ぐため、と言っても過言ではありません。
嵌頓という危険な合併症を防ぐため、鼠径部に痛みなどの症状があり鼠径ヘルニアが疑われる場合、まずは専門医に相談し、診察や検査を受けて正確な診断を得ることが重要です。
まとめ

鼠径部に痛みやしこりなどの症状が見られる場合は、鼠径部に関連する病気の可能性があります。鼠径部で起こる病気には、鼠径ヘルニア、鼠径部リンパ節腫脹、動脈瘤・静脈瘤などが挙げられます。その中でも、代表的な病気として挙げられるのが「鼠径ヘルニア」です。
鼠径ヘルニアは、太ももの付け根(鼠径部)の筋肉に穴が開き、鼠径部の膨らみを認めるとともに、腸をはじめとした臓器が外に飛び出す病態を指します。自然治癒することはなく、治療には手術が必要です。放置すると、腸が締め付けられて戻らなくなる「嵌頓」という危険な状態を発症するリスクが高まります。
そのため、鼠径部に痛みやしこり、違和感などの症状を感じた場合は、早期に医療機関を受診して専門医の診断を受けることが重要です。
鼠径ヘルニアは当院までご相談ください

大阪・梅田の鼠径ヘルニア専門クリニック「大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック」では、成人鼠径ヘルニアを内視鏡(腹腔鏡)による日帰り手術で治療しています。
2022年8月の開院以降、当院は多くの鼠径ヘルニアの患者さまの手術を行ってきました。直近の月間の手術件数は60件を超えています。
また、当院は、JR大阪駅から徒歩3分の好立地にあり、土曜・日曜・祝日も診療を行っているため、患者さまが通院しやすい環境です。
鼠径ヘルニアや鼠径部の症状でお悩みの方は、当院までご相談ください。
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