鼠径ヘルニア豆知識

【質問】お腹の手術歴があるけど大丈夫?

大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村宣亜(せんあ)です。

本日は、こんなご質問について。

『お腹の手術歴があるのですが、当院の治療は受けられますか?』

結論からお答えすると、患者さまに応じて可能な場合があります。
一方で、注意点もいくつかあります。

本日は、腹部手術歴が当院の治療に与える影響について
わかりやすくお話いたします。

 

腹部の手術が将来的にもたらす影響

お腹に限った話ではないのですが、
一度手術を受けたことのあるお体の部位は、将来的に
他の病気の治療に影響を与える可能性があります。

その原因のひとつは、『癒着』です。

手術を受けるということは、
今まで空気に触れたことがなかった臓器が空気に晒されること、
また臓器に眼に見えない無数の傷が付くことを意味します。

人体には自己治癒のシステムが備わっており、
一度傷を受けた部位は自然修復するのですが
その過程において、癒着が発生します。

具体的には、ある臓器が他の臓器とベッタリくっついたり
新たにヒモのような構造物ができたりと様々であり
手術前と異なる臓器の配置となり、術後1-2ヶ月かけてゆっくりと固定されます。

お腹の手術の場合、
小腸は自由度が高く、お腹の中を動き回るのですが
本来なかったはずの狭い空間に迷い込んで出られなくなったり
ヒモ状の構造物に絡みついて締め付けられたりします。
これを腸閉塞と呼びます。お腹の手術特有の合併症です。

一般に癒着の程度は、手術回数が多いほど強くなります。

これらの理由から、
過去に手術を受けたことがある場所にもう一度、手術を受ける場合
この癒着を取り除かないと、目的とする臓器に到達出来ないため
手術時間が長くなる、出血量が増えるなど
初めての手術に比べて、難易度や合併症のリスクが高くなります。

腹部手術歴のある患者さまの注意点

引き続いて、具体的に注意すべき点について。

前述のように、二回目以降の手術は初めての手術に比べて
以下のような問題点があります。

まずひとつに、手術時間が長くなります。

癒着を取り除くために時間がかかったり、
予期せぬ状態に対する対応などにより、通常よりも長い時間を要します。

追加時間は30分程度で済む場合もありますが、
長い場合だと数時間、必要になるケースも稀ではありません。

必要以上に手術が長くなることは、
患者さまにとって良いことはひとつもありません。
このため、癒着の態度がひどい場合は、手術中の判断により
より早い手術方法(内視鏡手術の場合、開腹手術へ移行するなど)へ変更となる可能性があります。

次に、臓器を傷付けるリスクが上がります。

癒着により引っ付いた臓器を剥がす際に、
臓器が傷付く可能性があります。

お腹の手術において特に重要なのが、腸の癒着です。

お腹の中の臓器の中でも特に腸の壁は脆く、
間違った力が少し掛かるだけで簡単に引き裂かれてしまいます。
この場合、傷付いた部分の壁を補修したり、
程度が酷い場合は傷付いた部分を切って
腸を繋ぎ直す必要があります。

このような場合、手術後の経過観察が必須であるため
日帰り手術としては取り扱うことが出来ません。

【手術内容が複雑でないこと】、【手術時間が短いこと】はそれぞれ
日帰り手術において欠かすことが出来ない大原則です。

(日帰り手術の適応については、過去記事を参照ください)

治療適応は患者さまに応じて異なります

それでは、過去にお腹の手術を受けた方全てが
当院の治療を受けられないのかと言うと、そうでもありません。

腹部は大きく【上腹部】と【下腹部】に分かれており
上腹部の手術では癒着は上腹部に、下腹部は下腹部にと
それぞれ癒着が出来やすい場所が異なります。

また、一般に内視鏡手術の方が開腹手術に比べて
癒着が出来にくい手術方法です。

こう言った理由から、過去の手術歴を詳しく知ることは
当院での手術が可能かどうかを判断する根拠となります。

『癒着は検査でわからないの?』

こうお考えの方もおられるかと存じますが
残念ながら現在の医療では、ある程度の予測は出来ても
完全に把握することはできません。
加えて、癒着は起きやすい方、起きにくい方がおられます。
この辺り、実際のところ専門医としても頭を悩ませる部分です。

一方で、手術後により丁寧な管理を行うという観点では
入院での手術に軍配が上がることは事実です。

実際のところガイドラインにおいても、
腹部手術歴のある患者さまに対しては鼠径部切開法が推奨されており
内視鏡手術はエキスパートオプションという位置付けです。

(鼠径部切開法と内視鏡手術について、詳しくは過去記事を参照ください)

こう言った背景から、治療適応の検討については
専門医により慎重に行われる必要があります。

 

いかがだったでしょうか?

当院の治療を受けて頂くにおいて必要な条件は、

・日帰り手術が可能なこと
・内視鏡手術が可能なこと

患者さまは、この両方を満たす必要があります。

当院では、ガイドラインに準拠しつつ
患者さまの安全の担保を第一目標と致します。

これらの達成が少しでも危ぶまれる場合、
当院の治療をお勧めしない場合があります。

 

本日は以上です。

ご一読いただき、ありがとうございました。

 

大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック

岩村 宣亜

鼠径ヘルニアの治療は当院を受診ください

JR大阪駅から徒歩3分の大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックでは、鼠径ヘルニアを内視鏡(腹腔鏡)による日帰り手術で治療しています。

鼠径ヘルニアの症状があるなど、お困り・お悩みの方はぜひ当院を受診ください。

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大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
院長 岩村宣亜
外科専門医、消化器外科専門医
2022年8月に大阪梅田に大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックを開院。早期の社会復帰が可能な鼠径ヘルニアの内視鏡日帰り手術の普及に努める。
外科専門医、消化器外科専門医
2022年8月に大阪梅田に大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックを開院。早期の社会復帰が可能な鼠径ヘルニアの内視鏡日帰り手術の普及に努める。
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