鼠径ヘルニア（脱腸）

【質問】抗血栓薬内服中でも治療できますか？

2022.07.05 2024.07.13

大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村宣亜（せんあ）です。

抗血栓薬は血液をサラサラにする効果がある反面、
手術の際には出血のリスクとなります。

本日は、当院における抗血栓薬を服用中の患者さまに対する治療について
分かりやすくお話させて頂きます。

Contents（目次）

抗血栓薬の利点と欠点
当院における抗血栓薬の取り扱い
日帰り手術クリニックが果たすべき役割
鼠径ヘルニアの治療は当院を受診ください

抗血栓薬の利点と欠点

抗血栓薬とはその名の通り、血栓を予防することを目的とした薬であり
以下の二種類に分類されます。

・抗血小板薬（アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンなど）

・抗凝固薬（ワルファリン、ダビガトラン、リバロキサバンなど）

主に、心臓や脳などのご病気の既往がある方が再発予防に服用されることが多く
1種類のみならず、2種類、3種類と服用されている方も少なくありません。
また、ご病気のある方のみならず、健康志向の高い一般の方においても
動脈硬化予防として、サプリメント感覚で知らずのうちに服用していた、というケースも存在します。

一般に、処置や検査、手術など、お身体に負担がかかる医療行為においては
事前に抗血栓薬の中止が推奨されることが多く
理由としては、出血のリスクを高めてしまうことが挙げられます。

抗血栓薬の種類に応じて治療前の中止推奨期間が定められており
1日内服を止めれば良い薬もあれば、1〜2週間の中止期間が必要となる薬もあります。

外科手術に出血は付き物であり、時に命に関わる危険を孕んでいるため
我々外科医は普段から、少しでも出血量を減らすことに全神経を集中しています。

鼠径ヘルニア治療において問題となる出血とは、
手術後、治療部位にできる血腫（血のかたまり）です。
ほとんどの場合は手術後数週間かけて自然に吸収されるのですが、
血液は感染の温床となり、留置したメッシュに感染が及ぶリスクが高まります。

また、稀ながら手術後に程度の激しい出血があり
血を止める処置が必要となる可能性があります。

これらの理由から、出血のリスクを高める薬は手術前に中止したいのは山々なのですが
その薬を止めてしまうことで、逆に血栓が出来やすくなってしまい
元となる病気の病状を悪化させてしまう懸念があることから
外科医の一存で中止することも出来ず、往々にして頭を悩ませる種になります。

この場合、抗血栓薬を処方している主治医の先生に
抗血栓薬の一時的な中止が可能かどうか、判断を仰ぐ必要があります。

通常、抗血栓薬の内服再開は手術翌日から、長い場合でも手術後2, 3日程度であり
原則として手術後、速やかに再開して頂くことが可能です。