女性にも起こる鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアとは、太ももの付け根にあたる「鼠径部」の筋肉にすき間が生じ、腸などの臓器がそのすき間から皮膚の下に飛び出してくる病気です。一般的には「脱腸」とも呼ばれています。
この病気は男性に多く見られ、発症の男女比はおおむね5対1から10対1とされていますが、女性でも発症する可能性があります。女性の発症頻度は男性に比べて低いものの、女性の鼠径ヘルニアは特に注意が必要です。

その理由には、女性の鼠径ヘルニアでは「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる合併症が起こりやすいことが挙げられます。嵌頓が起こると血流障害を引き起こし、放置すると腸が壊死する危険性もあります。そのため、女性の鼠径ヘルニアは、早期の診断と治療が重要です。
女性の鼠径ヘルニアの発症原因
鼠径ヘルニアにはいくつかの種類があり、それぞれ発症しやすい年齢層や体型に特徴があります。主な種類としては、外鼠径ヘルニア・内鼠径ヘルニア・大腿(だいたい)ヘルニアが挙げられます。
このうち、女性に多く見られるタイプとしては、若い女性に多い外鼠径ヘルニア、中高年の女性に多い内鼠径ヘルニアがあり、さらに、痩せ型の中高年女性に多いのが大腿ヘルニアです。
外鼠径ヘルニアや内鼠径ヘルニアは、体質的な要因に加え、職業による身体への負担や生活習慣の影響などが発症の要因になることが一般的です。一方で、大腿ヘルニアは、痩せ型の女性が妊娠や出産を経て骨盤周囲の筋肉が緩むことで、発症リスクが高まる傾向があります。

女性の鼠径ヘルニアの症状
鼠径ヘルニアの症状には男女差はほとんどなく、太ももの付け根付近にふくらみや違和感を覚えることや、立ったとき・お腹に力を入れたときに腫れが目立つことが代表的な症状です。
ただし、女性の場合はホルモンバランスの影響により、生理周期によって症状の強さが変化することがあるため、注意が必要です

鼠径ヘルニアの主な症状
□ 太ももの付け根(股)に、柔らかい膨らみが出てくる
□ 膨らみは手で押さえたり・横になると引っ込み、消失する
□ 物を持ち上げたときに、太ももの付け根に膨らみが現れる
□ 長時間歩いている・立っていると太ももの付け根に違和感や痛みを感じる
□ お腹が張った感じがする、痛みがある
女性の鼠径ヘルニアの特徴
女性の鼠径ヘルニアには、男性とは異なるいくつかの特徴があります。
まず、女性の場合は鼠径部のふくらみが小さく目立ちにくいことが多く、異変に気づかないまま進行してしまうケースが少なくありません。特に、ふくらみがピンポン玉ほどの大きさにまでなっている場合は、すでに症状が進行している可能性があります。
また、女性特有の病気が合併していることもあるのが特徴です。たとえば、ヌック管水腫や鼠径部異所性内膜症などが挙げられます。これらの疾患が関係することで、女性の鼠径ヘルニアは男性よりも病態が複雑になる傾向にあります。

さらに、女性は、腸などが締めつけられて血流が途絶える「嵌頓」のリスクが男性よりも高いとされています。嵌頓は放置すると腸の壊死や腹膜炎などを引き起こし、命に関わる危険な状態に進行することもあるため、注意が必要です。
このような理由から、女性の鼠径ヘルニアは、鼠径ヘルニアに精通した専門医の診察を受けることが大切です。
鼠径ヘルニアの嵌頓とは
鼠径ヘルニアを放置すると、症状が徐々に悪化し、日常生活に支障をきたすだけでなく、命に関わる深刻な合併症に進行する可能性があります。その中でも特に注意が必要なのが「嵌頓」です。
嵌頓とは、腸などの臓器が鼠径部のすき間(ヘルニア門)にはまり込み、本来の位置に戻れなくなる状態を指します。鼠径ヘルニアで嵌頓が起こると、脱出した腸管の血流が遮断され、腸閉塞や腸壊死、さらには腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こす危険があります。

このような状態になると、腸閉塞に伴う嘔吐から誤嚥を招き、誤嚥性肺炎を併発するケースもあります。また、腸の壊死が進行し腹膜炎を起こすと、全身状態が急速に悪化し、命に関わる事態へと進行することもあります。
この嵌頓は、鼠径ヘルニアの合併症として最も危険で突然現れる可能性があります。鼠径ヘルニアでは、この合併症である嵌頓を防ぐために治療を推奨していると言っても過言ではありません。
女性の鼠径ヘルニアの治療法
鼠径ヘルニアの根本的な治療には、男女を問わず手術が必要です。手術方法は大きく2つに分けられます。ひとつは、鼠径部を直接切開して行う「鼠径部切開法」、もうひとつは、内視鏡を用いて腹腔内から治療を行う「腹腔鏡手術」です。
手術では、通常、合成繊維で作られた医療用メッシュを用いて、腹壁の弱くなった部分を補強する方法が採用されます。メッシュによる補強は、再発率が低く、術後の痛みも比較的少ないことから、現在では標準的な治療法となっています。

以前は「組織修復法」と呼ばれる、周囲の筋膜や組織を縫い縮めて補強する方法が主流でした。しかしこの方法は、術後の痛みが強く、再発のリスクも高いとされており、現在では選択されることが少なくなっています。
女性の鼠径ヘルニアに対しても、基本的にはメッシュを用いた鼠径部切開法や腹腔鏡手術が行われます。ただし、将来的に妊娠を希望される方の場合、妊娠中に腹圧が高まることで、体内に留置されたメッシュが圧迫感や痛みの原因となる可能性があります。このようなケースでは、メッシュの使用について慎重な検討が必要です。
そのため、治療方針を決定する際には、年齢、妊娠の希望、ライフスタイル、職業などを総合的に考慮し、患者さま一人ひとりに適した治療方法を選ぶことが大切です。
当院で行う治療とその特徴
当院は、大阪梅田・JR大阪駅から徒歩3分の場所にある、鼠径ヘルニアの内視鏡(腹腔鏡)日帰り手術専門クリニックです。
開院以来、女性の患者さまにも多数ご来院いただいており、女性特有の不安や体への配慮にも細やかに対応しています。ここでは、当院で行う治療とその特徴をご紹介します。
鼠径ヘルニア「専門クリニック」による内視鏡日帰り手術
当院は、鼠径ヘルニアの内視鏡(腹腔鏡)手術に特化した日帰り手術専門クリニックです。「鼠径ヘルニアのみ」を専門的に診療することで、疾患への知識と経験を積み重ね、手術技術の向上に努めております。
また、病態が複雑になりやすい女性の患者さまにも対応できるよう、経験豊富な専門医が治療を担当し、女性特有の解剖学的な特徴を踏まえた適切な日帰り手術を実施しています。

消化器外科専門医・麻酔科専門医による「痛みの少ない」「安全性を重視した」治療
当院では、日本消化器外科学会認定の消化器外科専門医および、日本麻酔科学会認定の麻酔科専門医が、患者さまの診療を担当いたします。
腹腔鏡手術は、術後の痛みが少なく、傷跡も目立ちにくいという特長があり、整容面を重視される女性の方にも適した治療法です。一方で、全身麻酔を伴う手術であるため、安全性の確保が極めて重要です。
当院では、麻酔中から術後にかけて、麻酔科専門医が一貫して厳密な安全管理を行っており、患者さまにより安心して手術を受けていただける環境を整えています。

「ひとつのクリニック」で月70件以上の手術実績
2022年8月の開院以降、当院は沢山の鼠径ヘルニアの患者さまに手術を行って参りました。おかげさまで開院から2025年7月までの累計手術実績は単一クリニック(一つのクリニック)で1,969件に達しており、直近では月間70件以上の手術を実施しています(2025年7月実績:72件)。
手術経験に裏打ちされた技術とノウハウにより、幅広い症例に対応可能です。近年では、当院の診療体制や手術実績をご評価いただき、関西一円の大学病院からのご紹介も増加しております。こうした背景から、関西全域はもとより、南は九州、北は関東・北陸、さらには海外からも、多くの患者さまにご来院いただいております。

通院3回の短期間治療で早期社会復帰を実現
当院の治療は、初診・手術・術後診察の3回の通院で完了するのが基本です。仕事や育児、家事などでお忙しい女性の方にも通っていただきやすいよう、多くの手術枠をご用意し、初診から手術までの待機期間も短縮しています。
スケジュールに応じた柔軟な予約調整が可能で、初診から数日以内に手術・治療が完了するケースもあります。日常生活への影響を最小限に抑え、早期の社会復帰を実現する治療が可能です。

大阪駅から徒歩3分の好立地で土日祝も診療
当院はJR大阪駅から徒歩3分、大阪梅田ツインタワーズ・サウスの13階に位置しています。また、平日だけでなく土曜日・日曜日・祝日も診療を行っています。
仕事・育児・家事などでお忙しい女性の方にも、ご自身のライフスタイルに合わせて無理なく通院・治療いただける環境を整えています。

院長メッセージ
女性の鼠径ヘルニアは決して珍しい病態ではありませんが、男性に比べて数が少ない一方で、ヌック管水腫や子宮内膜症が併存するリスク、妊娠や妊活と治療とのタイミング、メッシュ使用の是非など、診療は男性より確実に複雑なものとなります。
当院は開院以来、数多くの女性患者様の診療に携わらせて頂きましたが、一人ひとりの診療が画一化できずにオーダーメイドのような診療になることから、私自身患者さまと一緒に頭を悩ませて参りました。ただ、こういった経験があるからこそ、患者さま一人ひとりに適した診療のご提案ができるのではと考えております。
診療には女性スタッフが必ず付き添い、最大限の配慮を行っております。鼠径部の膨らみやしこりでお困りの患者さまは、ぜひ一度、お気軽にご相談下さいませ。
医療法人大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
院長 岩村 宣亜

治療の流れ
ご予約
受診の申込は、お電話もしくはWeb予約を通じてご予約をお願いします。受診するかどうかを検討中の方には、LINEでの無料相談も受け付けております。

初回受診(診察、治療方針の決定)
初回受診時には、医師の診察を経て治療方針を決定します。鼠径ヘルニアと診断し治療が必要と判断され、当院での治療をご希望の場合、同日に手術予定日を決定します。
※検査などの都合上、一部の患者さまにおいて手術前の診察回数が増える可能性があります。

二回目受診(手術当日)
ご来院後、まずは体調確認を行い検査着に着替え、手術室へと移動していただきます。手術時間は、前後の麻酔を含めて約1時間半程度です。
手術後は、当院で十分に休息をとっていただき、飲水や自立歩行が可能であることを確認した上で、ご帰宅いただきます。
万一手術後に問題が生じた場合は、患者さまにお渡しする緊急連絡先へご連絡ください。

三回目受診(診察終了)
手術から約一週間後に診察を予定し、問題が無ければ診察終了となります。
経過に異常が無く来院が難しい場合は、オンライン診療のご対応も可能です。

治療費用について
鼠径ヘルニアの治療は、保険診療の適用範囲内で受けて頂くことが可能です。また、高額療養費制度の適用を受けることで、ご負担額を低く抑えることが可能です。
当院で高額療養費制度を適用して治療を受けた場合、ご負担額の具体例は以下の通りです。
■70歳未満、目安年収370万円未満:約60,000円
■70歳未満、目安年収370~770万円未満:約80,000円
■70歳以上、課税所得145万円未満:約18,000円
※70歳以上の現役並み所得者は、70歳未満と同程度です。
※高額療養費制度による払い戻しを受けた後の額になります。
※自費診療の内容により価格は変わります。
※一部の患者さまに手術物品費用として追加のご負担を頂戴する場合があります。
上記は目安の金額になりますので、費用の詳細に関するご質問は当院までお問合せ下さい。