【質問】すべての鼠径 (そけい) ヘルニア (脱腸) に手術が必要ですか?
- 2021年8月10日
- 鼠径ヘルニア(脱腸)
大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックの岩村宣亜です。
当ブログに足をお運び頂き,ありがとうございます。
『そけいヘルニアと診断されたのですが、症状がなくて…それでも手術が必要なんですか?』
本日はそういったご質問にお答えしたいと思います。
無症状だけど、手術を受けないといけないの?
そけいヘルニアに伴う一般的な症状として、以下のようなものが挙げられます。
・そけい部(股の付け根)の違和感
・痛み
・膨らみ(ピンポン球大〜テニスボール大、それ以上と様々)
・立ったら出る、寝ればひっこむ
これらの症状は、そけい部に開いた筋肉の穴を通して
お腹の中の臓器が外に飛び出すために起こります。
一方で、症状はそけい部の膨らみのみで、その他の症状がない
そういった方々がおられるのも事実です。
以前の項でもお話しましたが、そけいヘルニアの治療には手術が必要です。
手術とは、麻酔をかけた状態でお体に負担をかける行為であり
患者様にとっては、傷の痛みや麻酔をはじめとした様々な不安が伴うことから
できる限り手術を受けたくないのは当然のことかと思われます。
それでは、そけいヘルニアと診断を受けた方々すべてに手術が必要なのでしょうか?
A. 原則全ての方に治療が必要、一部の方は要注意のもと経過観察が可能
質問に対するお答えですが、原則的に手術は全ての方に対して必要です。
以下、鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015より抜粋です。
嵌頓症例あるいは嵌頓移行の危険が高い症例は全例手術が推奨される。
嵌頓の危険が少なく、症状の軽い症例では十分な説明のうえで経過観察も許容される。
(推奨度グレードA:行うよう強く勧められる)
嵌頓とは、筋肉の穴に腸がはまり込んで抜けなくなることを意味します。
嵌頓した腸は血流障害を来たして壊死する可能性があり、命の危険があるため
原則緊急手術が必要となります。
この理由から、嵌頓するリスクが高いケースには全例手術を行いましょう、
というのがガイドラインの趣旨であります。
では、嵌頓のリスクが高いケースとは、どのような場合なのでしょうか?
一般的なそけいヘルニアはほぼすべて、嵌頓のリスクが高い状態
その答えとしては、一般的なそけいヘルニアはほぼすべて
嵌頓のリスクが高いと考えられます。
そけい部に開いた筋肉の穴は当初は小さいのですが、その時期に自覚される方は少なく
時間と共に腹圧にさらされて、穴は大きくなってきます。
これに伴って膨らみも大きくなるため、症状に気付く方が増えてきます。
穴がごく小さいうちは腸が出る可能性が低く、嵌頓のリスクも低いと考えられますが
穴が大きくなるにつれて内臓脂肪などの脱出量も多くなり、
大きくなった穴からは腸が脱出しやすくなり、嵌頓のリスクが高まります。
このため、ピンポン球大程度の膨らみを自覚された時点で、既に嵌頓のリスクは高まっている状態です。
自覚された時点で手術が必要になる、と言うのはこういった理由があります。
一方で、嵌頓のリスクが低いケースとは、どのような場合を指すのでしょうか?
ガイドライン上では、妊娠中は嵌頓のリスクが低く
出産後の手術を検討して良い、とされています。
(推奨グレードC1:行うことを考慮しても良いが十分な科学的根拠はない)
これは、子宮が大きくなるにつれて腸が上腹部に持ち上げられるため
そけい部に腸がはまり込みにくくなる、という理由が考えられます。
しかしながら、妊娠中でも手術を行う方が、母胎共にメリットがあるケースもございます。
妊娠中はご自身のみでなく、胎内のお子様のお体にとっても非常に大切な時期です。
ご自身で判断されるのではなく、ぜひ一度医療機関を受診してください。
当院では、そけいヘルニアに対する日帰り内視鏡手術を提供させて頂きます。
目立たない小さな傷で行えて、痛みが少ないため
早期の社会復帰が可能です。
本日は以上です。
長文ご一読いただき、ありがとうございました。
大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村 宣亜
鼠径ヘルニアの治療は当院を受診ください
JR大阪駅から徒歩3分の大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックでは、鼠径ヘルニアを内視鏡(腹腔鏡)による日帰り手術で治療しています。
鼠径ヘルニアの症状があるなど、お困り・お悩みの方はぜひ当院を受診ください。