【解説】鼠径ヘルニア手術、男性機能への影響は?
大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村宣亜(せんあ)です。
男性の鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の症状のひとつに、
性行為中の鼠径部痛や射精障害があり、性機能障害の原因として知られています。
また、鼠径部には精巣に流れ込む血管やリンパ管などが集まっており
この部分を手術で触ったり、メッシュを挿入することから
『手術で性機能に悪い影響が出るのでは?』
とご不安になられる方もおられるかと存じます。
本日は、鼠径ヘルニア手術が男性機能に与える影響について
わかりやすく説明させて頂きます。
(女性の場合、鼠径ヘルニアで性機能に問題が及ぶことはありません)
鼠径ヘルニアと男性機能の関係
そもそも、鼠径ヘルニアと男性機能にはなぜ関係があるのでしょうか?
鼠径部を通過する鼠径管、いわゆる鼠径ヘルニアが通過する道には
精索と呼ばれる束状の構造物が入っています。
この精索とは、男性のみに存在する臓器であり
精巣から尿道に精子を運ぶ管である精管や、精巣を栄養する血管(精巣動静脈)、
リンパ管や神経などが通る束のような構造物のことです。
鼠径ヘルニアの手術の際には、この精索を剥離操作で触ったり
すぐ近くにメッシュと呼ばれる人工のシートを挿入します。
もし精管を手術中に損傷すると、男性機能の低下を来し兼ねません。
この精管、高齢男性で今後お子様をお考えでない方にとっては
基本的に必要のない構造物ではありますが
再発鼠径ヘルニアといった一部の場合を除き、手術ではこの精管を温存します。
(再発鼠径ヘルニアの場合、前回の手術の影響により、精管をやむを得ず取り除く場合があります)
鼠径ヘルニア手術は男性機能障害を改善する
一方で、鼠径ヘルニアそのものが性機能障害の原因であることも知られています。
性行為中の鼠径部痛や射精障害等の性機能障害は、鼠径ヘルニア患者の2.4〜23.2%に認められると言われており
臨床的に重要な問題として位置付けられています。
これに対し、鼠径ヘルニアの手術を行うことでこの割合が1.0〜6.0%に減少するとされています。
一方で、手術前に疼痛を認めなかった2.3%において、術後に中等度から高度の疼痛が出現するという報告もあります。
この痛みは、鼠径ヘルニア手術でしばしば問題となる
慢性疼痛と呼ばれる合併症です。
手術中に精管を損傷したり、組織が繊維化(治癒過程で繊維成分が増えて、組織が硬くなること)を起こして
精管や神経を巻き込むことが原因であるとされています。
メッシュ法は男性不妊の原因とはならない
成人の鼠径ヘルニアの手術では、鼠径部に開いた筋膜の穴を塞ぐために
メッシュと呼ばれる人工物を挿入します(メッシュ法)。
このメッシュは、手術後に周りの組織と癒着することで
塞いだ穴が再び開かないように、手術後も鼠径部に残り続けるのですが
このメッシュにより、精巣の容積や血流が悪影響を受けることはなく
男性不妊症の原因とはならないとされています。
従って、将来的に子供を作りたいと考えておられる若年男性にとっても
男性不妊を懸念してメッシュ法を避ける必要はありません。
ナイーブな問題こそ、ご相談ください
いかがだったでしょうか?
鼠径ヘルニアは中高年男性に多い疾患ではありますが
20代、30代といった若年者にも起こる可能性があります。
間違った知識を持って疾患を放置することは、
将来の健康面でのリスクを増加させることになり兼ねません。
正しい知識を持って病気に臨むことは、とても大切なことであり
当クリニックでは、責任を持ってそのお手伝いをさせて頂きます。
ぜひ一度、ご相談ください。
本日は以上です。
ご一読いただき、ありがとうございました。
大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村 宣亜
(引用: 鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015 CQ 25, 26)
鼠径ヘルニアの治療は当院を受診ください
JR大阪駅から徒歩3分の大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックでは、鼠径ヘルニアを内視鏡(腹腔鏡)による日帰り手術で治療しています。
鼠径ヘルニアの症状があるなど、お困り・お悩みの方はぜひ当院を受診ください。