鼠径ヘルニア豆知識

【質問】日帰りしない方が良い人っているの?

大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
岩村宣亜(せんあ)です。

当院で行う鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の日帰り内視鏡手術
ほとんどの患者さまに安全に受けて頂ける一方で、
一部の患者さまにおいては、主に患者さまの安全面の観点から
入院の上での手術をお勧めする場合がございます。

本日は、具体的にどのようなケースでは入院での手術が好ましいと判断されるのか
わかりやすくお話させて頂きます。

日帰り手術の定義と現状

日帰り手術とは、その名の通り
【同一の日に入院、手術、退院を行うこと】です。

デイサージャリーと呼ばれることもありますが、
手術翌朝の退院を指す場合もあり、厳密な定義から外れる意味でも使われています。

我が国における日帰り手術は、現在、普及過程にあります。

一方で、米国や一部の欧州の国々では、
疾患に応じて異なりますが、日帰り手術が既に広く、かつ安全に普及しています。

『外国よりも日本の方が医療の質が高いのでは?』

そうお考えになる方もおられるかも知れませんが、全くもってそんなことはありません。
米国は米国、欧州は欧州で、それぞれ素晴らしい手術や質の高い医療が行われています。

そもそも、なぜこのような違いがあるのでしょうか?

この背景には、保険制度の違いに加え、
日本における急性期病床過剰の問題があります。

これは、2019年のOECD(経済協力機構: 日米欧州等の主要先進国38カ国)における
人口1,000人あたりの病床数を示したグラフですが
日本(赤の棒グラフ)が突出して多いことが見てとれます。

日本では1985年に病床規制が導入されるまでの間、
民間病院の数は増加の一途にありました。

患者さまにとっては、気軽に病院を受診できるという安心感があるかも知れませんが、

必然的に一病床当たりの患者さまの数は減り、
病床の稼働率は低下して経営が圧迫されます。

これに対し、手術患者を原則入院とすることで
病床の稼働率を上げ、経営状態を維持してきたことと
入院手術の方が、結果として得られる保険点数が高くなる(=売上が多く上がる)ように設定されていたことが
日帰り手術の普及を遅らせた、という見解があります。

これらの経緯は近年、是正されつつありますが
未だに手術=入院、というイメージが定着しているのには、このような背景があります。

患者さまにとっては、入院で手術を受けられるという安心感がある一方で
入院の場合、日帰りに比べて差額ベッド代や食事代などの入院関連費用が高額となります。

医療技術の日進月歩の革新に加え、
日帰り手術の推進は、医療費の削減する効果があるという報告もあり
日帰りで安全に行える手術は年々、増加傾向にあります。

長文となりましたが、ここからは
鼠径ヘルニアの日帰り内視鏡手術が好ましくないケースとその理由について、
具体的にお話させて頂きます。

※以下はあくまで一例に過ぎず、適応には慎重な判断が必要です。
実際のケースに関しては、個別にご相談をお願いします。

その1: 中等度以上の臓器合併症がある

当院で行う内視鏡手術には、全身麻酔が必要です。

このため、全身麻酔が可能かどうかという判断は、
内視鏡手術そのものが可能かどうか、という判断に直結します。

そもそも内視鏡(腹腔鏡)手術は、以下のようなケースにおいては
安全面の観点から無理に行わず、回避される傾向にあります。

  • 心臓や肺に中等度以上、またはコントロール不良の合併症のある場合(全身麻酔は心臓や肺に負担をかけるため)
  • 全身状態不良など、長時間の手術が不適切な場合(内視鏡手術は開腹手術に比べて手術時間が長い傾向があるため)
  • 肝硬変や病的栄養不良の場合(側副血行路が発達している、出血しやすい、腹水貯留がある、傷が治りにくい、などの理由)
  • その他、個別に全身麻酔、腹腔鏡手術が適さないと判断する場合

このような場合は、はじめから開腹手術が選択されたり
例え内視鏡手術が行われる場合でも、入院で慎重な適応のもと行われる傾向にあります。

その2: 複数回の開腹歴(特に前立腺の手術)がある

鼠径ヘルニアの手術は、下腹部の手術に該当しますが

中でも前立腺の手術部位と非常に近接しています。
(経尿道的手術はこれに含みません)

このため、前立腺術後の鼠径ヘルニア手術には
通常の手術の2倍、3倍の時間を要する場合があります。

元気な患者さまであれば日帰りで行うことも十分可能ですが、
少しでもご不安がある場合や、専門医により長時間の手術が不適切と判断する場合は、
無理をせず入院をお勧めする場合があります。

また、複数回の腹部手術歴や大きな手術歴がある場合、
程度の強い癒着(臓器同士のひっつき)が想定されます。

内視鏡手術では、ヘルニア部位に到達するまでにお腹の中を通過するため
(TEPの場合は腹膜前腔)
癒着があると、手術難易度が上がるだけでなく
癒着を取り除くために手術時間が長くなったり
癒着した腸を剥がす際に腸を損傷し、修復が必要になるなどのリスクがあります。

このようなケースにおいては、無理をせず入院での手術をお勧めする場合があります。

その3: 緊急手術(嵌頓)の場合

鼠径ヘルニアの合併症のひとつに、嵌頓があります。
これは、鼠径部の筋膜に開いた穴に腸がはまり込むことで
腸の壊死や腸閉塞などを引き起こす、非常に危険な状態であり
多くの場合、緊急手術が行われます。

(嵌頓に関しては、過去の記事をご参照ください)

緊急手術は通常の予定手術に比べて、術中、術後の様々な合併症のリスクが高まることが証明されており
合併症の管理が可能な入院施設で行う必要があります。

また、嵌頓を伴う鼠径ヘルニアにおいては
精通した外科医師により、詰まったヘルニアをお腹の中に戻す処置(用手環納といいます)が行われる場合があります。

この場合、緊急手術は一旦は必要なくなるものの、
お腹に戻した腸が既に壊死していないか(この場合、お腹の中で破綻して腹膜炎を起こします)、
また腸の動きが弱くなってイレウス(麻痺性腸閉塞)を引き起こさないかなど、
入院の上で慎重に経過観察する必要があります。

嵌頓の場合は、鼠径部の痛みや腫れ、吐き気や嘔吐を認める場合が多いのですが
中には無症状のまま嵌頓するケースがあります。
このような場合には、速やかに入院施設をご紹介させて頂きます。

患者さまに最適な方法をご提案します

いかがだったでしょうか?

鼠径ヘルニアは、脱腸として昔から馴染み深い疾患であることから、
比較的簡単な手術と思われがちな傾向にあり
また患者さまにとっては、恥ずかしい、忙しいと言った理由から、
医療機関を受診せずに放置されがちな疾患ですが

非常に奥が深い手術であり、複雑な病態であるため
医師の専門性と手術後の患者さまのQOL(生活の質)が直結する疾患です。

内視鏡手術は傷が小さい、痛みが少ないなど
比較的分かりやすいメリットがあるため、本邦においても広く普及してきた経緯がありますが

その適応には慎重な判断を必要とすることに加え、
患者さまの状態や様々な状況を鑑みずに、無理強いをしてまで行う治療ではありません。

一方で、高い専門性をもつ医師であれば、
内視鏡手術の適応が広がる(対応可能な患者さまの幅が広がる)のも事実です。

是非、専門医へご相談下さい。

本日は以上です。

ご一読いただき、ありがとうございました。

大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック

岩村 宣亜

鼠径ヘルニアの治療は当院を受診ください

JR大阪駅から徒歩3分の大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックでは、鼠径ヘルニアを内視鏡(腹腔鏡)による日帰り手術で治療しています。

鼠径ヘルニアの症状があるなど、お困り・お悩みの方はぜひ当院を受診ください。

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大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニック
院長 岩村宣亜
外科専門医、消化器外科専門医
2022年8月に大阪梅田に大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックを開院。早期の社会復帰が可能な鼠径ヘルニアの内視鏡日帰り手術の普及に努める。
外科専門医、消化器外科専門医
2022年8月に大阪梅田に大阪日帰り外科そけいヘルニアクリニックを開院。早期の社会復帰が可能な鼠径ヘルニアの内視鏡日帰り手術の普及に努める。
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